カシミヤを中心としたアイテム展開を始めてから、気がつけば8年という時間が経ちました。その間、私たちが挑んできたのは「カシミヤ=高級で繊細で扱いにくい、カシミヤ=冬に着るもの」という固定概念を壊すこと。カシミヤをただの贅沢品として捉えるのではなく、日常に寄り添う“機能性素材“としてどう使いこなせるか、そこに焦点を当てて試行錯誤を続けてきました。ニット、スウェット、Tシャツ、シャツ——あらゆるアイテムに落とし込み、ようやく一通りの展開ができるところまでたどり着いたと感じています。
その次のフェーズとして、私たちが向き合ったのが「イタリアでカシミヤを作る」ということでした。長年、ファッション界では「イタリア製のニットは別格」と語られ、数多くのメゾンブランドがイタリア製のニットを採用しています。イタリアは世界有数のニット生産国であり、まるで伝統工芸のように脈々と続く技術とノウハウが、国全体に染みついています。日本には存在しない特殊な編み機、繊細な素材への慣れた手つき、長い歴史に育まれた感性。それらが折り重なって、“イタリアらしさ“という独特の味わいを生み出しているのです。
今回、イタリアの工場で「生産できる」という声を頂いたとき、“いよいよここまで来たか“と滲み出る嬉しさがありました。私たちにとって、イタリアで作るというのは一つの夢であり、憧れでもあります。すぐさま依頼し、始まったこの新たな挑戦。私の中にあったイメージは、「イタリア=ハイゲージの技術が圧倒的に優れている」というもの。これは実際、理屈では説明しきれないほどの差を生み出します。