こんにちは、ボーディの水谷です。
いつもBODHIをご覧頂き誠に有難うございます。ボーディがスタートしてから気づけば7年、あっという間です。年2回、春夏と秋冬に展示会があるのですが、ここを目標にモノ作りをしていると1年が直ぐ経ってしまい…。作ることだけでこれまで終わってしまっていたので、もう少しボーディについて深く知って頂くきっかけを直接的に出来たらと思い、今回メルマガという形で改めて始めてみようと思います。(実はコロナ禍で少し”Journal”というものをやってみてましたので…こちらはまた再編集してまとめられたらとも思っています。)商品が出来るまでの過程の話や、どんなことを考えて進めているのか、その他諸々お伝え出来ればと思っています。うまくお伝え出来るか分かりませんが、優しい眼差しで見て頂けましたら幸いです。皆様どうぞ宜しくお願いいたします。
元々私は、アメトラの影響とアメリカ映画、西部劇から吸収するスタイルや音楽が好きなもののベース。ラルフローレン、ヴィンテージのミリタリー、スウェット、デニム、B Dシャツ etc...加えて”MADE IN USA”とついていたら、とりあえず間違いないと思っていた時期もありました。(実際にはサイズ感など個体差が激しく、日本では許されないミス商品だったりもあるのですが、アメリカだから許される、逆にカッコいいみたいな価値観がありました。)タフでラフで、毎日同じ格好でも飽きのこない、まるでゲームや漫画の主人公みたいな見え方に憧れを。そこから時間が過ぎると、ヨーロッパブランドが日本で流行するようになり、自分の中でも浸透し、スウェットがニットに、デニムがトラウザーズに、B Dがブロードシャツに置き換わり、綺麗な見た目でドレープのある、ドレス感覚の質感やシルエットに傾倒していきました。自分の感覚では、アメリカ=カジュアル、ヨーロッパ=ドレス。交わらないと思っていた相反するアイテムたちがミックスされて1つのスタイルに仕上げられるのは日本特有の文化なのかもしれない。意外とこれは他国にはない特別なことではないかとう新鮮さを今でも思い出します。
先日雑誌の中でも紹介頂き少しお話させてもらいましたが、元々裏毛スウェットをカシミヤ100%で作りたい、と言う思いからこのブランドはスタートしました。もし、ヨーロッパで扱われるような綺麗な素材に、アメリカのようなラフでタフなアイテムを作れたら…1つのアイテムの中にアメリカとヨーロッパの要素が一緒に存在していたら…これこそ日本からでしか生まれない新しいものが出来上がる。これが私の全ての始まりです。(閃いた瞬間の、自分の中でこれだ、と雷が落ちた感覚は今でも覚えています。)
となると、もう1つ大事な要素は素材について。当時はハイスペック素材全盛期かつアウトドアブームで、GORE-TEXや吸水速乾などとにかく合成繊維がブーム。けれども自分は元々合成繊維が肌に合わない事や、洋服はやはり昔から天然素材だと思っていたこともあって、あまり興味が無く。そもそも昔のアイテムは全て天然素材。合成繊維も天然繊維の代替えとして量産するために生まれた人工物です。レイヤーの一番外側に着用するには最適ですが、肌に近い部分の洋服は、やはりナチュラルが一番。自分にとって追求するものは必然と天然繊維しかありませんでした。ではどの天然繊維を扱うのが良いのか。天然繊維…コットン、ウール、リネン、シルク、カシミヤetc…意外と種類は限られていて。植物性と動物性に分かれますが、私の知る限り動物性の方が耐久性も強い(植物性は摩擦や色落ちに弱い)し、素肌に着れるもの…ウールはチクチクして着れない、アルパカやラクダなど希少性の高い素材は、手にいれるのも不安定。結果としてカシミヤが耐久性があり、安定的に供給されて、良質である全ての条件をクリアする素材であることが分かりました。200年以上高級素材として君臨するカシミヤが求められる理由は、この価値の変わらない機能性、実用性にあると私は考えています。
こうして私のやりたいこと…アメリカのスウェットを綺麗な表情のカシミヤで作ること…は定まったのですが、実際どこで作れるのか。スウェットはそもそもコットンを編み込むものなので、カシミヤのような細い毛質の糸を同じように使ったら直ぐに切れてしまう。結局当時は全く見当がつかず、アイデアだけで終わりそうになっていました。そんな時、古着屋でウールの厚手セーターを見て、このボリュームが出せるのならカシミヤでスウェットのようなアイテムを作れるのかもしれない。元は今呼ばれているスウェットも、ニット(獣毛)から出来たもの。だったら、まずはニットの製法からアプローチを試みて取り組んでいこうと。ここからいける。そこから厚みを出す技法や、高密度に度杢を詰めること、リブのテンションを強く取り、ニットなのに補強の2本針ステッチを入れる、…今に至るヘビーウェイトスウェットと呼ばれるアイテムが出来上が理、結果としてアメリカに見る“ラフでタフな”型となりました。
けれども1つ抜けていたことが。“綺麗な表情のある…”の要素はどこに行ったのか、実はこれと同じタイミングで作ったもう1つのスウェット型に表現されています。それがミドルウェイトシリーズ。この話はまた次の機会に。